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モダンスタイル茶道家 溝呂木真紀子さん「茶道とeterbleの共通点は “サステナブル”」「eterble 3rdコレクションへの想い」

日々の生活を豊かに、そしてサステナブルな取り組みに自然と参加できるヒントを、さまざまなプロフェッショナルにお伺いしていくINTERVIEWシリーズ。今回は、モダンスタイル茶道家の溝呂木真紀子さんにご登場いただきます。主催されているモダンスタイル茶道の活動について、そして今秋発表されるeterbleの3rdコレクションで監修いただいた茶道にまつわる新商品について、お話を伺いました。

ーモダンスタイル茶道の活動について教えてください。

溝呂木さん まずは抹茶との出会いからお話します。幼少期、祖母が着物を着て、日常的に抹茶を点ててくれていたんです。お茶の先生ではなかったのですが、そのほっとする情景が長く記憶に残っていました。時を経て20代の頃から、自分で着物を着られるようになりたくて、着付けを習い始めたんです。着付の先生が茶道のご指導もなさっていて、お茶を習うきっかけとなりました。

茶道は伝統を重んじる “道の世界” 。ハードルが高いイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、私自身が子供の頃に感じたように、身近な暮らしの中で「無心になり、心が豊かになるティーライフ」を味わってほしいと思うようになり、日常のライフスタイルに茶道や和のしつらいをとりいれた、アール・ド・ヴィーヴル* の考え方を提案した「モダンスタイル茶道」を5年前より展開をしております。

主催する教室以外にも、抹茶カフェや企業でのお点前指導、テーブルコーディネーター、香司和文化含め多数のコラボレーションイベントなどにも協力しております。また、個人的には旅先で、小さな茶道具で一期一会のコミュニケーションを楽しんでおります。

* アール・ド・ヴィーヴル(Art de Vivre)とは、「生活美学」や「暮らしの芸術」という意味のライフスタイルのこと。日常風景に美を見出す、感性豊かな生活を大切にしているフランス人の生活美学と言えるもの。

ー茶会を催す場合、入念な準備から、当日のおもてなしまで、気を配ることが沢山あると思います。心がけていることがあれば教えてください。ー

溝呂木さん 茶道では「一期一会」という言葉があります。同じ方々と同席する機会があったとしても、この時の茶会は一度きりと心得て、お客様に対して心を尽くすという意味です。全く同じことを繰り返すことができないので、一回一回の茶会や出会いを大切に心を込めておもてなしをするということを大切にしております。

モダンスタイル茶道は、茶道の「見たて」「守破離」の考えをベースに、テーマと季節をベースにしつらいを考えます。和 × モダンスタイルということで、日本だけではなく、ヨーロッパ・アジアなど異国の文化や現代アートなどもミックスさせて、茶会全体の統一感を作り上げていきます。大切なお客様に美味しい一服を飲んでいただくために尽くしております。

また、日常へのとりいれやすさにも配慮しています。ご自宅のインテリアやテーブルウェアなどを茶道具に見たてたり、テーブルでできるスタイルを活かして、テーブルコーディネートの要素を取り入れたりして、楽しんでいただけるようお伝えしています。

eterbleとの出会いについて教えてください。またブランドの個性(サステナブルなテーブルウェアブランド)についてお感じになられたことがあれば教えてください

溝呂木さん eterbleクリエイティブディレクターの葉山さんとの出会いをきっかけに、ブランドのことを知りました。

テーブル茶道では、テーブルにクロスを纏うところから、コーディネートが始まります。eterbleの商品ラインナップにもテーブルクロスがあり、自社の廃棄クロスを原料にして再生させたポリエステル生地で作られた商品であると伺いました。個性的で大変興味深いブランドだというのが第一印象でした。

茶道も実はサステナブルなんです。約450年に渡ってつながれてきた文化があり、受け継がれてきた道具の数々があります。特に茶道具は、茶碗一つとってもたくさんの職人さんがかかわり、自然や天然の素材にこだわっているものが多く、経年劣化を楽しんだり、金継ぎなどで修復しながらつないでいきます。

そんな茶道の文化とeterbleのブランドコンセプトや商品開発には、共通するものがあるなと感じました。新しい形に生まれ変わり、繋いでいくプロセスを何よりも大事にされていることにも感銘を受けました。それから、商品そのものも魅力的です。茶室を思わせるような品の良さ、落ち着いた色合い・・・引き算の美をクロスから感じとり、ぜひモダンスタイル茶道にも取り入れてみたいと思いました。

eterble 3rdコレクションでは、溝呂木さんにも監修に入っていただき、茶道具を包み・運ぶための新商品が登場します。使用感やデザインなどお感じになられたことがあれば教えてください。

溝呂木さん 茶道では、道具を保管し守るための袋物(ふくろもの)や仕覆(しふく)があります。また、茶会に出掛けると、茶室に入る前に自分の荷物を風呂敷に包み、荷物をまとめて預けます。つまり、「纏う・包む」という行為が日常的です。

今回、eterbleの3rdコレクションでは、茶道の袋物をモチーフとした「茶碗袋」や「茶杓入れ」「へだて(器同士がぶつからないようにするための緩衝材)」「茶器の持ち運びバッグ」等を監修させていただきました。

私は生地の選定から関わらせていただいたのですが、ご用意いただいたサンプル生地だけでも沢山の種類があり、商品開発の大変さを目の当たりにしました。ディレクターの葉山さんとも相談しながら、私からは現代の器や道具にもコーディネートしやすい色・柄を提案させていただきました。

溝呂木さん 新商品のラインナップの中でも、「茶碗袋」は茶道具の棗を入れる大津袋の形を模して制作しました。結び手が長く作られていますので、茶碗の大小に合わせて包むことが出来ます。また用途を変えてショルダーバッグのようにもお使いいただけます。また「へだて」も本来の用途だけでなく、コースターやインテリアの台座としてご使用いただけるように形、大きさ、デザインを工夫しました。このように、サイズレスで使い道が複数あることも新商品の魅力です。

それから、今回採用した柄布は裏側から見ると色が反転するので、驚きがあって、包みを開けた時の喜びや高揚感を味わうことができます。見えない部分にもこだわる着物の八掛のような小粋さがありますよね。一見シンプルでありながら、奥行きがある・・・そんなシックでモダンなデザインが特長です。

茶道をテーマにした商品ですが、サイズや使い道の汎用性が高いこと、現代の生活にもなじむ洗練されたデザインになっていると思いますので、ぜひ多くの方に手に取ってもらいたいと思っています。

ー今後、eterbleに期待することがあれば教えてください。

溝呂木さん 今回eterbleの商品開発に携わらせていただいて、思ったことがあります。次世代につながるものづくりを実践されながら、暮らしに寄り添うテーブルウェアを開発されていくさまは、まるで千利休のようだと感じました。利休は、自然を活かした簡素な道具を用い、シンプルで飾っていないものに本質的な価値を認め、美しさを見出す感性を大事にされていました。その考えや精神がサステナブルに通じるのではないかと思います。

eterbleの商品は、リサイクル素材を用いながら、洗練されたシンプルなデザインで生活を豊かにするアイテムを展開されています。今回の新商品も、時に生活の中に、時に旅先で、日常・非日常を問わず、特別な時間や空間を彩る一助になることを願っております。

プロフィール


溝呂木 真紀子|Makiko Mizoroki
モダンスタイル茶道家。モダンスタイル茶道主宰。江戸千家 茶道歴35年。
モダンスタイル茶道 https://www.jmodernstyle.com
Instagram https://www.instagram.com/makiko_modernstylesado